近年、ChatGPTやWhisper、Stable Diffusionなど、AIの進化がめまぐるしく、少し目を離すと新しい機能が増えていて驚くことがある。
いまやAIは社会に浸透しあらゆる場面で使われているのでこれを「ブーム」と呼べるかはもうわからない。
ただ少なくとも、歴史的に見てAIが社会から注目されるということはこれで3回目らしい。
そもそもAIとはなんの略?
AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略で、日本語では「人工知能」と訳される。
人間の知能を模倣し再現した能力を、あらゆるシステムに実装する技術や分野を指す言葉だ。
一言で「知能」と言っても、人間の知能にはつまづいて転びそうになったのに何事もなかったように涼しい顔で歩く機能や、滑舌の悪いおじいちゃんの言葉を脳内で正常な日本語に変換する機能など、さまざまな機能が備わっている。
それと同様にAIにも、学習・推論・問題解決・知覚・言語理解など、人間の知能を示すさまざまな機能が含まれている。
AIには今まで3回のブームがあった
さてそんなAIだが、今までで3回世界でブームになったことがある。(ちなみに、ChatGPT以降の社会が第4次AIブームであると解釈されることもある。)
「ブームがあった」ということは逆に考えると言い方は悪いけど何回か廃れたということになる。一体いままでどんなことがあって、今のAIにつながっていったんだろう。
第1次AIブーム
第1次AIブームは、おおよそ1950年代から1960〜70年代までの期間とされている。
「人工知能」という言葉が初めて使われたダートマス会議
人工知能という言葉が世界で初めて広がるきっかけとなったのが、ダートマス会議だ。
ダートマス会議とは、1956年の夏にアメリカ合衆国ニューハンプシャー州のダートマス大学で開催された会議のことで、この会議で初めて「人工知能」という言葉が使われたとされている。
ダートマス会議では、コンピュータが学習・問題解決・自然言語の理解など、あらゆる人間の知能による活動を模倣できるとされ、多くの研究者の間で「すごすぎて草。」と話題になった。
特定の問題を解決するAIが研究される
第1次AIブームでは、「範囲は限定されてるものの特定の問題解決に特化したAI」の研究が盛んにおこなわれた。
たとえばチェスプログラム。ゲームの戦略を学習し、最適な選択をすることで人間に挑戦をするAIであったり、数学問題を解くプログラムも研究されていた。
今でこそ普通のことだけど、当時はボードゲームをPCと対戦できるなんて考えられなかった時代だ。日々研究されるAIのニュースを見て、世間もそれはもう「オラ、ワクワクすっぞ!」状態だった。
過度に期待されていたために期待はずれの結果に
特定の問題解決を「推論」と「探索」で実現するこの時代のAIだったが、世間があることに気づきはじめた。
我は日常で数学なんぞ解かぬし、チェスは友達と打つぞ。
そう、AIの発達により特定の状況で最適な答えを出すことが簡単にはなったが、現実で発生するような問題を解決するのは、この時代のAIにはまだまだ難しかったのだ。
コンピュータに「常識」を教えることや、複雑な言語を理解させることなど、さまざまなことが未解決のままだった。
これによってAI研究への資金提供は減少し、研究は停滞し、ついには「AI冬の時代」と呼ばれる時代に突入してしまう。
第2次AIブーム
長い冬の時代を経て、第2次AIブームはおおよそ1980年代から1990年代までの期間に訪れた。
専門家AIを作るエキスパートシステム
第2次AIブームの火付け役となったのが、エキスパートシステムだ。
エキスパートシステムとは、特定分野の専門家の知識をコンピュータに取り入れ、専門家を模倣することで具体的な問題を解決することができるシステムだ。
この技術には汎用性があり、医療診断や地質学の調査、金融分析など、さまざまな分野で活躍することになった。
企業の投資が活発化・過度な期待がまた膨らみだす
エキスパートシステムは、多方面の分野で商業的にも成功をおさめた。それによって、AI研究への政府や企業からの投資も増加した。このころはデータストレージ技術等、機械面の方の進化も重なり、AI技術をさらに発展させる条件が揃っていた。
そんなこんなで、日々進化するAI技術を見て、一度AIを見放した世間も
我、エキスパートシステムを用いて世紀末の覇者となる。
といった具合で、期待に胸を膨らませていた。
この時点でのAI技術が限界を迎える
はじめはAI冬の時代を終わらせるほどの成功をおさめたエキスパートシステムだったが、システムを適応させる範囲にはやはり限界があった。
エキスパートシステムでは、すべての問題に正確に対応することはやはり難しかった。そして、そもそも専門家の知識を記述して用意するのは結局人間のほうであることなども目立ちはじめた。
そういう感じで、AI研究に対しての投資額はふたたび減少し、エキスパートシステムの限界が明らかになり、第2次AIブームは終わりを迎えた。
第3次AIブーム
第3次AIブームは、2000代初頭から現在にかけて続いている。
生成AI以降が第4次AIブームと呼ばれることもあるが、なんかややこしいので本記事では現在も込みで第3次AIブームとする。
ディープラーニングの登場と進化
第3次AIブームを引き起こしたのは、ディープラーニングというAI技術だ。
ディープラーニングとは、複数の層のニューラルネットワークを用いることでAIに複雑なパターンを学習させることができる技術で、2006年にコンピュータサイエンスと認知心理学の研究者であるジェフ・ヒントンらによって発明された。
2012年にはImageNetという画像認識技術の大会で、ニューラルネットワークを使用したチームが圧勝したことも大きく話題となった。
あらゆる技術や商業と結びつく
ディープラーニングは、画像認識・音声認識・自然言語処理など、さまざまな分野でかなりの成果をあげた。
さらには、スマートフォンが世界的に普及したことなどがさらに拍車をかけ、AI技術は消費者に向けたサービスにも使用されるようになった。
IoT(もののインターネット)という言葉も話題になり、家電品がインターネットに繋がり、家庭のAmazonの購入履歴などを学習するなど、AIは人々にとってかなり身近なものとなった。
生成AIの進化と急速な普及
そして、2022年8月に画像生成AI「Stable Diffusion」がリリースし、そのほんの翌月、SNSの日本語圏では静岡県の水害のフェイク画像が拡散され、多くの人を困惑させた。
それからさらに少し経ち、2022年11月にChatGPTがリリースされた。まるで本当に人が書いたような文章の生成や、略語や文法ミスの文章も正確に読み取ることができ、こちらもかなりの話題を呼んだ。
生成AIは現在もあらゆる機関、企業で研究や開発がおこなわれている。
AIが発展することによってこれからどうなる?
ということで、今この時代というのはまだまだAI技術が発展していっている最中だ。
AIが発展することによってこの先どうなるかという議論も、あらゆる場でされている。ここでは簡単に、メリットとデメリット2つの視点でまとめておこう。
今後AIが発展することによって受けられそうなメリット
まずはメリットを挙げる。本当はもっとたくさんのメリットがあるんだろうけど、最低限ピックアップする。
あらゆる作業の効率が向上する
AIはルーティンになっている作業はもちろんのこと、複雑な計算であっても高速で効率的に処理をおこなう。
そのため、これからAIがさらに社会に浸透し幅広い場面で使うことができるとなると、あらゆる仕事の効率が向上することが見込まれる。
生産性が向上し、本来作業に費やしてた時間を別のことに使用できるようになった!という場面がいろんなところで増えると思われる。
危険な作業をロボットに代替することができる
危険であったり、有害であったりする場所での作業をAIを搭載したロボットに代替することで、人間が危険な場所での作業をおこなわなくてもよくなる。
また自動車の運転等、「いやー今日は調子が悪いから2回くらい事故るかもなー。」的なノリが絶対に許されない作業もAIに置き換えることによってより安全性が向上すると思われる。
あらたな産業が生まれる
AIが進化することによって、いままでには存在しなかった新しい産業が生まれる。
例としては、自動運転車・ドローン等のロボティクス、ヘルスケアAIによる新しい健康管理サービス、AI管理による自動化された農業などがよく言われている気がする。
また、今自分たちじゃまだ想像すらできないような産業が生まれる可能性も大いにある。AIが社会に浸透し、進化すればするほど、人の生活自体もそれに合わせて変わっていくからだ。
今後AIが発展することによっての喰らいそうなデメリット
なににおいても、技術が発展することでのデメリットはかならず生まれてしまう。
雇用が減少する可能性がある
AIがあらゆる業務上の作業を効率化・自動化してしまうため、不要な職種が生まれてしまい、結果的に雇用が減少してしまう可能性がある。これは2018〜2019年ごろによく言われていた気がする懸念事項だ。
実際に現時点でもセルフレジが全国的に普及しているが、これはレジ担当従業員の雇用が減少していること意味する。
とくに単純なルーティンの仕事がAIが代替しやすい仕事ではあるが、長期的にはほとんどの仕事に人が必要なくなるという声もある。
サイバーセキュリティ上のリスクが増えるかもしれない
JavaやC言語をマルウェアの作成に使用していた悪い人がいるように、AIを悪用したあたらしい攻撃手法が編み出されてしまう可能性もある。
また、AIには大量のデータが必要なので、個人情報などの収集されたデータがなんらかの誤用で流出してしまうということも考えられる。
もちろん個人情報の流出は昔からちょくちょく企業がやらかしてニュースになるものではあるが、AIが組み込まれたコンピュータウイルスができたりするのは少し恐ろしい。(攻殻機動隊の人形使いみたいなロマンはあるけど)
なぜこういう処理結果になったかがブラックボックス化する
AIは、扱っている情報が膨大であることと処理の構造上、処理の経緯を見ることができない。
たとえば超ウルトラ高性能AIに「宇宙の真理はなにか」を計算させて、その答えが「アジフライ」だったとして、いったいどういう処理を経てその答えに行き着いたのかを知ることができないのだ。
世界中の伝承・宗教・哲学を解析して計算した結果の「アジフライ」なのか、どこからか処理が「10代はあまり好まない定食」に切り替わってしまっての「アジフライ」なのかがわからない。
この問題は実際に、「AIのブラックボックス問題」と呼ばれている。
AIはこれからも進化していく
1950年代から浮上を沈下を繰り返し、時間をかけて進化していったAIは、今や一般消費者にまで浸透し日常的に使われるものになった。
しかし、AIにはまだまだ進化の余地があり、とくに生成AIは近年急速な勢いで成長を遂げている。
AIがさらなる進化を遂げあらゆる場面に浸透したとき、いったいどんな社会になっているかは現時点では想像すらできないが、あわよくば寝てるだけで給料が振り込まれる社会になんねーかなと私は願っている。